機雷がなんだ! 全速前進!

SEというかプログラマというか、日々のエンジニア生活の中で体験したことなどを中心に書き残しています。

*[本]「Choose Your WoW!」: 働き方を最適化するディシプリンド・アジャイル・アプローチ(第2版)

組織的なアジャイルの導入を学ぶために何をしたものかと思い悩んでいたところ、たまたま知人が参加している DA勉強会 なるもの知り、私も参加してみることにしました。(DA:Disciplined Agile、ディシプリンド・アジャイル)

見学を兼ねて先月(2月9日)の月例会に参加せてもらったのですが、DA勉強会の教材としてこちらの書籍をご紹介いたいたので、早速購入して読んでみました。

www.kinokuniya.co.jp

ちなみにタイトルに含まれるWoWとは「チームの働き方(Way of Working )」のことです。(この表現は私は今回が初見でした)

今回、私は電子書籍(Kindle版)で購入したので、すぐ読めましたが、ペーパーブックだと届くまでに結構時間がかかる(確かN週間くらい)らしいので購入される方はご注意ください。

 

本の構成

本の構成は、下記のような章立てになっています。

<構成>
第1章 働き方の選択

第2章 規律の実現

第3章 ディシプリンド・アジャイル・デリバリー(DAD)とは

第4章 役割、権利、責任

第5章 プロセス・ゴール

第6章 適切なライフサイクルの選択

第7章 規律ある成功

 

印象に残った点

DAのコンセプトについて共感できる部分がいくつかあったので、以下のとおり引用させてもらいます。(DAの詳細についてはここでは触れません)

はじめに

本書を読むべき理由

・特定の考え方に依存しないアドバイスを提供する

単一のフレームワークや手法のアドバイスに限定したものでも、アジャイルとリーンにも限定したものでもない。わたしたちの哲学は、出自を問わず優れたアイデアを探すことであり、ベストプラクティスというものは存在しないのだと認識することだ(ワーストプラクティスもない)。新しい技法を学ぶとき、わたしたちはその強みと弱みは何か、そしてどんな状況に適用できるのか(できないのか)を理解しようと努める。

本書の対象読者

アジャイルの純度にかかわらず、「アジャイルの枠組み」にとらわれずにものごとを考え、新しい働き方を実験する意欲がある人々を対象としている。さらに、コンテキストが肝心であること、誰もがそれぞれ独自の状況で独自の方法で働くこと、そして何にでも当てはまるプロセスはないと認識している人々を対象としている。独自の状況に置かれているとはいえ、前に似た状況に直面した他者がさまざまな戦略をすでに考え出しており、それらを採用してテーラリングすることが可能だ。つまり、他者がプロセスについて学習したことを再利用することで、組織にとって重要なビジネス価値を高めることにエネルギーを注げる。本書はこの点を理解している人々も対象としている。

1.働き方の選択

チームが働き方を自ら選ぶべき理由

・わたしたちは最高でありたいと思っている

マーチン・ファウラーは最近、「アジャイル・コンビナート」という造語を生み出した。これは、多くのチームが「似非アジャイル」戦略(「名ばかりのアジャイル[AINO]」と呼ばれることもある)に従っている状況を表現した言葉である。こうした状況は往々にして、組織がスケールド・アジャイル・フレームワーク[SAFe]のような規範的なフレームワークを採用したうえで、チームに対しても、そうするのが実際に合理的であるか否かにかかわらず(合理的ではないケースがほとんどである)、そのフレームワークを採用することを強いている、あるいは、組織の標準として採用されているスクラム[ScrumGuide、SchwaberBeedle]に従うことをチームに強いていることの所産である。だが、本家本元のアジャイルは、個人と対話をプロセスやツールよりも重視するという非常にわかりやすいものだ。つまり、チームは働き方を自ら選び、それを進化させることを許されるべきであり、さらに欲を言えば、そのためのサポートを受けるべきなのである。

2.規律の実現

アジャイル・ソフトウェア開発宣言

「アジャイル・ソフトウェア開発宣言」の発表は、近年わたしたちが経験してきたようにソフトウェア開発の世界にとって、またビジネス界にとっても、画期的な出来事となった。しかし、時の流れは残酷なもので、アジャイル・マニフェストは次のようないくつかの点で古臭さを感じさせるようになってきた。

1.対象がソフトウェア開発に限定されている

アジャイル・マニフェストは、あえてソフトウェア開発に対象を絞って策定されたため、ITの他の側面はもちろん、エンタープライズ全体の他の側面も対象にしていない。アジャイル・マニフェストの概念の多くは、ソフトウェア開発以外の環境に合わせて調整することもでき、実際に長年そうされてきた。したがってアジャイル・マニフェストは、私たちが進化させることができる貴重な洞察を提供してくれており、当初意図したよりも対象を広げて進化させ、拡張させるべきものなのである。

2.ソフトウェア開発の世界は進歩した

アジャイル・マニフェストは1990年代の環境に合わせて策定されているため、その原則の中には時代遅れになったものもある。たとえば三つ目の原則は、ソフトウェアを2-3週間から2-3ヶ月ごとにリリースすることを勧めている。当時、デモンストレーション可能なインクリメントに分割してソリューションをデリバリーすることは、たとえ一か月ごとに行うとしても偉業だった。ところが現代では、偉業のハードルは大幅に上がり、アジャイルに習熟した企業は1日に何度も機能をデリバリーしている。これは、アジャイル・マニフェストがわたしたちをより良い方向へ導いてくれたおかげでもある。

わたしたちは以下の原則を信条とする

実際のところ、DAツールキットは当初から、さまざまな優れた戦略を組み合わせ、それらすべての戦略同士が実際にどのようにかみ合うのかに注目して開発されてきた。わたしたちは、科学的なアプローチと実際に役立つものが重要であることは信じて疑わないが、そこへたどりつく方法については、特定の考え方には依存しない。

原則:選択肢があるのは素晴らしいこと

この選択主導の戦略は中道である。両極の片側に位置するのは、規範的な手法だ。つまり、スクラム、エクストリーム・プログラミング(XP)、SAFeといった、ものごとを所定の方法で行うことをわたしたちに求める手法である。(…中略…)両極のもう一つの片側に位置するのは、自分たちの課題に注目して独自の手法を編み出し、原則に基づく新たなプラクティスを生み出して、それらを実験として試行しながら学習するという手法である。

 

おわりに

DAのコンセプトについては賛同できる点がいくつもあり、上記にその一部を引用させてもらいました。ここ最近、自分の中の問題意識として「アジャイル宣言」について思うところがあり、昨年末ブログにその思いの丈を書いたのですが、DAのコンセプトの中では、その点についてしっかりと触れられています。また、「特定の考え方に依存しない」ことを明言している点も、特定の手法を変に神格化しないという意味で好意的に受け止められました。

ということで、DAのコンセプトは概ね抵抗なく受け入れられる気がしましたが、これをどうやって実践し、更に、結果(価値)に繋げていくのか、についてはまだよく分かっていません(まだ実践してないから当たり前ですが)。

特定の考え方や手法に限らないこともあり、DAツールキット(道具箱)に収められた知識ベースは膨大な印象で、効率的に実践に繋げるための具体的な手段(DA Browserというものがあるらしいのですがまだ使ってない)がないと絵に描いた餅になりそうな気もしました。

実践に繋げるためにも、今後もDAのキャッチアップを続けていきたいと思います。